海外法人に
駐在していた会社員時代。
毎年のように人事異動があり、
古いメンバーが本社に帰任しては
新しいスタッフが日本から着任していた。
赴任期間はだいたい
5年程度で入れ替わりがあるのだが、
仕事に精通している古株のメンバーが
抜けると戦力ダウンとなり
かなり大変である。
特に業績が厳しいときなど
強力なスタッフが抜けるような
人事異動があると、
「今、こんなときにやってくれるな!」
と、人事部にすがって
撤回してほしいような気持ちになる。
しかし会社の
決定は覆ることはない。
「もうだめだ、、」
と絶望的になる。
しかし、
喉元を過ぎればなんとやらで、
しばらく時間が経つと
仕事は普通にまわっている。
多少の面倒臭さはあったはずだが、
現場の人間が必死に状況に適応しようと
奮闘しているうちにいつのまにか
問題は解決してしまっているのである。
2015年12月15日
(日本の日付で12月16日)、
アメリカで開催される
連邦公開市場委員会(FOMC)の
行方を世界中の市場関係者・投資家が
息を潜めて見守っている。
FOMCはアメリカの中央銀行にあたる
FRB(連邦準備制度理事会)が定期的に開く
金融政策の最高意思決定会合で原則年8回、
6週間ごとの火曜日に行われる。
今回の注目されているのは、
「米ドルの利上げがあるかどうか?」
である。
各国通貨の
発行体である中央銀行は
その国の景気をスムーズに
循環させるという使命があり
金利を調整する権限を持っている。
景気が悪く
モノが売れないときは
金利を下げて預金していることが
バカバカしくなるような雰囲気を作る一方,
お金を借りやすくして人が
お金を使うことを促進して景気回復を図る。
逆に景気が加熱しすぎて
物価が急上昇するようなときには金利を上げて、
融資を受ける気を削ぎ、
預金を促進することにより
人々の消費意欲を減退させるのである。
なぜ投資家が
この利上げを注目しているかというと、
利上げがあるともっとも安全な運用である
預金の妙味が相対的に増すために
リスクのある株式市場や債券市場から
資金が銀行預金に逃避してしまうからである。
そうなると
当然株式市場の相場は
下がる可能性が高まるので
買いのポジションを持っている人は
損失を避けるために手じまいを
考えなければならない。
FRBは
リーマンショックによる
世界金融危機が発生した2008年年末以降、
政策金利であるFFレートを0.25%という
最低水準に据え置いている。
誘導目標年0%~0.25%と
米国史上初のゼロ金利政策である。
このゼロ金利政策が
約7年にわたって続いている。
これが功を奏して
アメリカの景気は好転、
雇用も大幅に改善している。
ゼロ金利というこれ以上
下げようがないという状態は
中央銀行として今後の景気対策として
採れる手が限られている状態。
アメリカの景気に
過熱感があるというほどではないが、
この機会に将来の金融政策として切れる
カードを確保しておきたいところだろう。
しかし世界でもっとも
通用するお金である米ドルは
簡単にアメリカから外に出て、
他の国の投資・投機にまわってしまう。
リーマンショック後、
アジアを中心とする新興国の
株式、不動産が高騰したが、
これはFRBが行ったQE(量的緩和政策)と
ゼロ金利政策に因るところが大きい。
ヘッジファンドや一般投資家などが
為替も金利も安い米ドルを調達して
新興国の通貨に両替し、
その国の不動産や金融商品を買ったのが原因だ。
米ドルの金利が上がれば
そのポジションを解消して調達資金を返済する、
預金するという流れが発生するので
これとは反対の動きが起こる。
これまで上昇してきた
中国やアジアの株式や不動産が
下落傾向になる可能性が高い。
特に中国などは
自国通貨人民元の上昇や
人件費の上昇などで経済成長の鈍化が著しい。
今年は6月から7月にかけて
上海株式指数が30%、
8月24日には1日で8.5%暴落する
という事態に陥った。
FRBが9月の
米ドル利上げを見送った
原因のひとつになっているのは否めまい。
2015年12月。
中国や新興国にとってみれば、
「今、こんなときにやってくれるな!」
というところだろうか?