SDRの構成通貨になった人民元の運命は?

2015年11月30日、
IMF(国際通貨基金)理事会において
人民元(RMB)のSDR構成通貨入りが決定された。

実際に人民元が
その役割を果たすのは
来年2016年の10月1日からとなる。

「SDR(Special Drawing Rights=特別引出権)」

というのはIMFが加盟国に渡す仮想通貨である。

もし加盟国が
なんらかの理由で
外貨不足に陥ったときは
SDRを別の加盟国に譲渡することにより
現在の構成通貨である
米ドル(USD)、欧ユーロ(EUR)、
英ポンド(GBP)、日本円(JPY)
などの国際決済通貨を受け取って
外貨準備高を増加させることができる。

SDR構成通貨の見直しは
5年に一度で各通貨の構成比率は
その通貨の発行国の輸出規模や
国際的な決済での利用状況を勘案して決定する。

現在の4通貨の構成比率は
米ドルが41.9%、欧ユーロが37.4%、
英ポンドが11.3%、日本円が9.4%である。

これに人民元が加わる
2016年10月以降は米ドルが
41.73%、欧ユーロが30.9%、
人民元が10.92%、日本円が8.33%、
英ポンドが8.12%となるとされる。

SDRの構成通貨に
なるためには大きく分けて
二つの条件がある。

ひとつはその通貨の
発行国の経済規模や貿易量。

もうひとつは
通貨が国際市場で自由に
取引ができるかどうかである。

前回構成通貨の
見直しがあったのは2010年。

そのとき中国は十分な
経済規模を備えていると言えたが、
人民元は自由に取引が可能な
通貨であるとは言えなかった。

人民元には
中国本土内のみで取引可能な
オンショア人民元(CNY)市場と
香港を中心とした本土外で取引可能な
オフショア人民元(CNH)市場という
二種類の市場が存在している。

このうちオフショア人民元は
国境をまたいだクロスボーダー決済が可能で
為替レートの変動に制限がないが、
オンショア人民元の取引は管理フロート制という
事実上のドルベッグ制を用いていて、
中央銀行である中国人民銀行の完全な管理下にあり、
外貨との両替金額や国外への持ち出しなどに厳しい規制がある。

だから2010年の見直しのとき、
人民元は採用されなかったのである。

ところが最近中国は
このSDR構成通貨入りの
意思を明確に打ち出しており、
今年の8月11日からの3日連続の切り下げや
その後逆に切り上げに転じたのは
この目的達成に向けての最終的な
調整であったと言われている。

人民元が構成通貨に
採用されたということで
中国は正式に新制度での運用がはじまる
来年の10月までにドルペッグを外して、
資本取引の自由化も
進めなければならなくなるはずだ。

ただそうして
人民元が仮に国際為替市場で
自由に取引される
ハードカレンシー(国際決済通貨)
にまで昇華すれば他国にとって人民元は
正式な外貨として備蓄されるようになるだろう。

これまで中国当局が
管理していた人民元は
信用度が低かったため、
中国との貿易の決済はほとんど
米ドル建てでおこなわれていた。

これは取引としては非効率的で、
例えば日本と中国の貿易が米ドル建てで
行われるということは日本円から米ドル、
米ドルから人民元というふうに
2回の為替取引コストが発生することになり、
為替変動によりリスクも2倍になる。

人民元が自由化されて
国際決済通貨となれば
人民元建ての取引も容易だ。

自国と中国との貿易に
米ドルが介在する必要がなくなり、
逆に自国通貨と人民元との直接取引が
拡大することになるから、

中国と取引する企業は自国通貨と
人民元の間の為替レートを変動による
リスクを避けるために米ドルを
人民元に持ち替えることことにもなるだろう。

将来の為替レートの
変動に対するヘッジのための
為替予約なども必要になってくるので
人民元の国際的需要はますます高まってくる。

貿易を通じて
中国との結びつきが強い国の中には
国内の物価を安定させるために
自国通貨と人民元を連動させる国が
出てくるかもしれないし、

そうなれば為替レートの
安定のために行う市場介入用に
外貨準備として人民元を確保する動きが
促進されることも考えられる。

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投資家として、そしてFA(ファイナンシャルアドバイザー)として海外で20年間生き抜いてきた玉利将彦が独特の視点から語る海外投資の極意

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