米ドル利上げ1ー米政策金利過去の経緯

2015年8月、
日本の日経平均株価も
アメリカのダウも
ヨーロッパやアジアの平均株価も
すべての株式指数は大幅に値を下げた。

報道などでは
経済の不調による
中国株式の暴落が引き金となって
世界の株式市場に悪影響を
及ぼしたという論調が目立つが、
それと同時に無視できない大きな原因に

「米ドルの利上げ」

があるだろう。

早ければ今月9月にも
実行されるとの観測されているからだ。

アメリカの中央銀行にあたる
FRB(連邦準備制度理事会)は2008年年末以降、
政策金利であるFFレートを
0.25%という最低水準に据え置いてきた。

誘導目標年0%~0.25%と
米国史上初のゼロ金利政策である。

このゼロ金利政策が
6年以上にわたって続いている。

ある意味、
今が米ドル史上極めて特殊な状況にある
という見方もできるかもしれない。

アメリカに限らず各国の中央銀行は基本的に
スムーズな景気循環を達成する使命を帯びており、
経済の行方を見ながら金利を上げたり下げたりする。

簡単に言えば、
景気が悪いときは金利を下げ、
景気が良すぎて加熱気味のときは金利を上げる。

金利を下げると
銀行に預金する妙味が薄れる一方
お金を借りやすくなるので
人々は銀行からお金を引き出したり、
融資を受けたりして別のところで使うことになる。

これが消費に回れば
企業業績が良くなり、所得が上がり、
失業率が下がるので景気を良くする効果がある。

そのお金が投資に回れば株式市場が活気を帯びる。

ところが
こういう状況が続けば物価が上がり(インフレ)、
株価も「上がるからから買う」という雰囲気が蔓延し、
実態経済とはかけはなれた水準まで上昇してしまうことがある。

特にインフレは
貧困層の生活に深刻な影響を与え、
行き過ぎた株価の上昇は
それがあるべき水準に急激に戻るとき
多くの損失が発生して社会不安につながる。

だからそうなる前に
金利を引き上げて緩やかに
景気を冷やしてゆくのだ。

アメリカの政策金利は
2000年代の初めに5%から6%ぐらいあった。

当時はITバブルで好景気だったのである。

その後ITバブルは崩壊し、
2001年の同時多発テロ、
2002年のエンロン・ワールドコムの
粉飾決算スキャンダルと破綻で景気は急速に悪化、
FRBは政策金利を1%まで下げた。

ところが低金利を背景に
今度は2004年頃から住宅需要が高まり、
不動産市場が活性化。

不動産担保ローンを証券化した
MBS(住宅担保証券)やそれを基に作られた
CDO(債務担保証券)が大量に発行された。

当時低金利の日本円が
金融緩和に踏み切っていたこともあり、
円キャリートレードで米国に流れた資金などで
それらの証券の需要は最大化、
さらなるMBSを作るために米国の金融機関は
返済能力の低い人たちに金利の高い
サブプライムローン融資をおこなうことになった。

マイホームを持つことを
諦めていた人たちに住宅所有の
千載一遇のチャンスが訪れた形になり
サブプライムローンはまたたく間に普及。

サブプライムローンの金利は高く、
所得の低い層にとって返済は苦しかったが、
不動産の上昇局面では担保価値の上がった住宅を担保に
新たな融資を受けて返済を先延ばしすることが可能であり、
また住宅を転売することにより
ローンを完済したうえに売却益を得ることもできた。

ところが
不動産市場をはじめとして
景気に過熱感が出ていると判断した
FRBは政策金利を徐々に引き上げていった。

2004年末には2.25%、
2005年末には4.25%、
2006年末には5.25%という
最近10年間の最高値に達した。

金利の上昇とともに
融資を受けて不動産を購入する流れは衰え、
ローンの支払いに窮したサブプライム層が
住宅を手放す流れが加速したため中古市場がだぶつき、
住宅価格は頭打ちから下落するようになった。

担保価値下落とともに
売り遅れたサブプライムローン利用者が相次いで破綻、
さらに下落した不動産担保価値の下落は
金利の低いプライムローンを利用している層の懐を
圧迫して破綻するものが出るようになった。

サブプライムローンの
相次ぐ焦付きにより、
それもとに作られた証券が暴落。

いちはやく
サブプライムローンの証券化に着手し、
その取引の多くを担っていたリーマンブラザースが
総額約6000億ドル(約64兆円)という
史上最大の負債を抱えて倒産、
深刻な世界金融危機につながった。

FRBはサブプライム問題が
顕在化した2007年中頃より
再び急速に政策金利を下げ始めたが
世界金融危機を防ぐことができなかった。

リーマンショック、
世界同時株安が起こった翌月の
2008年10月に1%、
そして12月に0.25%に下げて現在に至っている。

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投資家として、そしてFA(ファイナンシャルアドバイザー)として海外で20年間生き抜いてきた玉利将彦が独特の視点から語る海外投資の極意

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