オーストラリアの不動産市場を俯瞰する

オーストラリアは
日本の20倍の面積の国土を誇るが、
そのほとんどが岩と砂漠で構成された
いわゆる不毛の地で居住地のほとんどは
沿岸部に分布する少数の大都市に集中している。

最大の都市が、
ニューサウスウェールズ州の
シドニーで人口は460万人だ。

次いでヴィクトリア州のメルボルン約430万人。

クイーズランドのブリズベンが約220万人。

西オーストラリア州のパースが150万人。

南オーストラリア州のアデレードが110万人、

と本土の各州の州都が
100万人以上を抱えるのみで
それ以外の都市はすべて60万人以下という
非常にわかりやすい人口の集中度合いである。

オーストラリアは歴史的に
移民を積極的に受け入れており、
シドニー、メルボルン、ブリスベンの人口は
2050年までに2倍程度になると
オーストラリア政府の統計省では予測している。

個人的に
1990年から1991年まで
シドニーで生活したことがあるが、
郊外にはイタリア系、レバノン系、ギリシャ系など
各国の移民グループの住民が
多く住んでいる地区が分かれていた記憶がある。

また、
東海岸のシドニーから
西海岸のパースまでバイクで走って
約1週間かけて大陸を横断したが、
走り出した翌日からパースに入る数時間前までの
5日間は明けても暮れても赤茶けた大地が
広がる風景が延々と続いているだけだった。

長期的に確実に人口が
増加するにもかかわらず開発可能な
土地が限られているということで
オーストラリアの不動産は長期的に
上昇してゆくのは間違いがない。

だが、各都市および地域の環境、
住民の需要の変化、タイミング
によって個別の状況は随分違ってくるので
投資をするときはより細分化した
分析をする必要がある。

シドニー、メルボルンは
多様な産業を抱えるいわば
バランスよく完成された都市であり、
金融など付加価値の高い分野も
充実しており平均所得も高い。

ちなみに
南半球でオリンピックが開催されたのは
この2カ所だけである。

都市の充実度では
他の都市に大きく水を開けているといえ、
それだけに不動産価格はすでに
かなりの高水準にある。

パースは
資源関連の産業に頼っている
という構造があるので
資源価格の上下に左右される要素が大きい。

資源価格が上昇すれば
景気がよくなり雇用が伸び、
不動産需要も高まるが、
その逆もまた真なりということである。

2006年、2009年に
大きな上昇局面があったが
それ以降は伸び悩んでいる。

ブリスベンは資源産業の他に
観光やサービス業も発達しており、
安定性はシドニー・メルボルングループと
パースの間ぐらいに位置付けられる。

150511Lewisham

不動産価格も
シドニー・メルボルンより割安であるが、
2014年にはG20サミットの開催地になったり、
近隣で大規模なLPGの開発と輸出が
はじまるので上昇余地が大きいと評価されている。

また、
最近は洪水にも見舞われ、
自然災害という突発的な要因により
上昇が抑えられていたということで
本来あるべき潜在価値に達していない
というという要素もある。

オーストラリアの
都市に起こっている現象として、
郊外の一戸建てからダウンタウンの
コンドミニアムへ人気が
移っているというものがある。

かつてオーストラリア人は
郊外の広い庭付き一戸建てに
家族で暮らすことが一般的な
成功のイメージであったが、

人口の増加により交通渋滞が
慢性化するなどで通勤先の商業地区(CBD)から遠い
郊外に住むストレスが増大していること、

あるいは子供が独立したあとに残った
老夫婦がもはやメンテナンス負担の大きい
広い家を必要としなくなっているケースが増えてきて、
中心部から近い場所にある集合住宅への
需要が増えているのである。

特にオーストラリア人や
移民の若年専門職層(プロフェッショナル)は
車や電車での通勤時間をかけることを嫌い、
家賃は多少高くてもオフィスに近く
公園、レストランやカフェにアクセスの良い
市街地の集合住宅にに住居を求める傾向にあるようだ。

今回のオーストラリアの
不動産価格上昇局面は
2008年頃から始まっており、
特にシドニーでの上昇幅は大きく、
2015年までに50%程度上がっており、
一番激しい時期には年率15%程度の
上昇を記録している。

一方でブリスベンは
2011年の洪水の影響で
一旦下落したことが響いて、
2008年との比較では
5%程度しか伸びていない。

また、
シドニー、メルボルンでの
不動産価格上昇の過熱感から
利上げがあるという予測もされていたが、

逆にオーストラリアの政策金利である
オフィシャルキャッシュは
2015年2月3日に2.5%へ、
さらに5月5日に2.0%へといずれも
過去最低水準に利下げされた。

これはオーストラリア
最大の輸出品である鉄鉱石の
最大の消費地である中国からの受注が減少し、
世界的にだぶついた鉄鉱石の価格が
10年来の低水準にある一方で、

オーストラリアドル為替レートが割高で
輸出競争力に悪影響を与えているという判断から、
利下げにより適正レートに矯正する目的がある。

要は国内不動産の
高騰に目をつぶっても、
主要産業の競争力を守るという
痛みを伴う金融政策に踏み切ったといえる。

そうなれば低金利のローンが
利用できるということになるので
オーストラリアの主要都市の不動産価格は
さらに踏み上げられることが考えられる。

シドニー、メルボルンの
不動産価格がかなりの高値に
達しているという現状を鑑みれば
今後の投資マネーが割安なブリスベンの
不動産に流れ込む可能性は小さくないだろう。

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投資家として、そしてFA(ファイナンシャルアドバイザー)として海外で20年間生き抜いてきた玉利将彦が独特の視点から語る海外投資の極意

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