上海不動産の現実。バブルと言うのは簡単だが

上海の知人の話である。

年齢は30代後半、独身女性だ。

2年ぐらい
交際している相手がいるので
遠からず結婚するのだろうな、
という風情。

優秀な人で
ベンチャーキャピタル系で
出来高制の仕事をしており収入も高い。

彼女は一昨年の2014年、
母親と一緒に長年暮らしていた
自宅のアパートを売却した。

そのアパートは
親の時代に政府から支給された
「弄堂」と呼ばれる家
(興味ある人はGoogle画像検索で「弄堂」を検索してほしい)
が都市再開発で取り壊しにかかったときに
代わりとして用意された旧式のアパートである。

売却して手にした
300万元(約4,800万円※)を頭金に
ローンを組んで900万元(約1億4,400万円※)の
マンションをプレビルド(建築前販売)で購入。

母親との共同名義で登記をした。

昨年引き渡しを受けて
2人で普通に住んで暮らしていたら、
そのマンションの価格が今年の始めぐらいから
猛然と上昇をはじめて現在価格で
1,500万元(約2億4,000万円)になった。

これは私も
自分の目で確認している。

ほんの数ヶ月で不動産屋の
店頭の価格が40%程度上がっているのを見て、
本気で目をこすって改めて見直した記憶がある。

とにかくこれまで
見たこともないような
急激な上昇だった。

不動産取引税を減税したとか
ローン比率が70%から80%になったとか、
理由はいろいろあるだろう。

中国の地方自治体の収入が
国有土地使用権の民間への
払い下げに大きく依存しており、
不景気による税収減もあいまって
国家ぐるみで不動産価格を下支えする
政策を打ち出したというところに
原因を求めることもできる。

政府として
減税やローン条件の緩和は
もともと地方都市の不動産価格を
浮揚させる意図があったが、
実際の不動産購入の波は
全国で最も高いレベルにある上海に
集中してしまったというストーリーも信憑性が高い。

いずれにしても
上海の不動産価格が暴騰した
という現実があるのは確かだ。

その最中、
彼女は素早くもうひとつ
マンションを購入していた。

先に買った物件の
ローンが残っていたら
次の融資が下りないので
まず手持ちの貯蓄で残債を完済した。

また現在、
独身の人間が同時に
複数の不動産の名義人となることは
規制があってできないので共同名義だった住居を
母親の単独名義に登記しなおして、
自分はもう一件購入できるような段取りもした。

仕事柄、
良質な融資の情報にも
アクセスが可能だった。

2件目に
手に入れたマンションは
1,600万元(約2億5,600万円※)、
それも現在では2,000万元(3億2,000万円※)に
なっているという。

ざっくり
1億5,000万円程度だった資産を
約3年で6億円近くまで
増大させたというところだろう。

この時期に
潤沢な貯蓄を持っていたことや
職業面の優位性も大きいが、
判断力と行動力をもって短期間に
これだけのことを達成したわけだ。

ある年齢以上の人には
既視感のある風景ではないだろうか。

30年近く前の日本にも
こういう人たちが結構いた。

今彼女のような人に

「完全にバブルだ、早く売った方が良い!」

と言うのは簡単である。

「以前の日本でも同じようなことがあったのでオレにはわかる」

と自分の見てきたことを語りたくもなる。

しかし記憶を辿ってみれば
この凄まじい高騰のあった2016年までに
上海の不動産は十数年間に渡って
10倍以上の価値になっているのである。

2000年代初頭に
100万元だったマンションが
2015年には1,000万元になり
それが今年1,500万元に
急上昇したというイメージだ。

実際これでほぼ間違っていないことは
上海にゆかりの深い人なら知っているだろう。

10年ぐらい前から
すでにバブル状態であると
言われつづけてきたし、
私も少なからずそう思ってきた。

しかし
そんな経験や感覚は
3年で資産を4倍に殖やした
人の前では沈黙するしかない。

むしろあのとき

「早く売った方が良い」

と言わなくてよかった。

仮に自分の
その言葉を信じて
上海の知人の誰かが
不動産を売却していたら
取り返しのつかない
損をさせていたことになる。

正直今も
バブルだと感じている。

だが破裂する前にその泡が
どれだけ大きくなるのかはわからない。

未来に向かって
新たに刻まれる出来事を
わずか数十年の自分の人生経験に
鑑みて断じることの危険性を
ひしひしと感じた。

※2016年11月時点のレートで換算

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投資家として、そしてFA(ファイナンシャルアドバイザー)として海外で20年間生き抜いてきた玉利将彦が独特の視点から語る海外投資の極意

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