「シンドラーのリスト」
http://tamarimasahiko.com/140712schindler.html
を鑑賞した。
第二次大戦中、ナチ党員で事業家の
オスカー・シンドラーが自分の工場で
働いていたユダヤ人たちをホロコーストから救う、
という物語である。
リアルな虐殺の描写や
利益のために人件費の安い
ユダヤ人労働者を利用していた
シンドラーの心情が徐々に変化して
最後は全財産を投げ打って多くの人の命を救う。。
という、
胸を打つ物語の感想は
他メディアの論評に委ねるとして、
ここではそこで描かれていた
「ビジネス」と「お金」
について考えてみたい。
ビジネスで一旗揚げたいと
考えていたシンドラーは戦争勃発と
ドイツのユダヤ人排除を商機と捉える。
そもそもユダヤ人は
勤勉で教育水準が高く、
資産家も多かったが、
迫害政策のために財産を奪われて
強制的にゲットーと呼ばれる
狭い居住地域に住まわされていた。
シンドラーは元々ユダヤ人が
オーナーであった工場を安値で買取り、
優秀なユダヤ人の財務担当者や
多くのユダヤ人労働者を安価に雇用して、
自分はナチスの将校たちを接待して
軍需品の注文を取り、利益をあげていった。
当時地域の経済で
広く活躍していたユダヤ人事業家が
暴力によって強制的に排除されて、
生産設備などが没収された。
これはある意味、
思いがけなく訪れた特異な状況で
排除されたユダヤ人には悪夢なのであるが、
時の流れを的確に掴み
ユダヤ人の抜けた穴に
すかさず入り込むところに
シンドラーはビジネス的嗅覚の鋭さがある。
ときの権力者である
ナチ将校達を金、女、酒で籠絡して
軍の利権を取り込むやり方も秀逸、
ある意味にわかに成り上がった
彼らにはこのやり方が
もっとも効果的だったのだろう。
まあ、そもそもシンドラーは、
自分自身もお金を稼いではそれを
湯水のように使う快楽主義者だったようだ。
やがてゲットーすら追い出され
強制収容所に送られるユダヤ人側にも
資産を守る知恵が垣間見える。
家族が小さなダイヤモンドを
パンにくるんで呑み込むシーンがある。
財産がすべて没収される中で
ダイヤモンドのように小さくて
価値の高いものを身体の中に隠すのだ。
ダイヤは消化されないから、
しばらくしたら排泄される。
排泄物の中からそれを探して
また呑み込むことを繰り返す。
そしてこの悲惨な時代を
生き延びることができれば、
そのダイヤを金に替えて
新たな生活の糧にすることができる。
あの時代、
実際にこうして危機を乗り切った
ユダヤ人は少なくないそうである。
ダイヤモンドは
絶滅収容所のアウシュビッツに
間違えて連れてゆかれた女性従業員を
救い出すときにシンドラーが
ドイツ軍将校に渡す賄賂にも使われる。
戦争も末期、ドイツは敗色濃厚。
起こした戦争犯罪は数知れず、
敗戦したら逃亡しなければならない
将校にシンドラーが投げつける言葉は、
「あなた方にはもうすぐこうした
資産が必要になるのではないですか?」
将校はその後、
あのダイヤを持って
着の身着のままで南米にでも
逃げたのだろうか?
リスト上のユダヤ人を
自分の工場に留め置くために
金を払い続けたシンドラーは戦争終結時には
ほとんどすべての資産を失っていた。
オスカーシンドラー
「お金の稼ぎ方は優秀」
「お金の運用はダメ」
「お金の使い方は神」
な人物である。