ベルリン。世にも奇妙な都市

ベルリンは奇妙な土地である。

ユーロ圏随一の経済大国である
ドイツの首都であるにもかかわらず、
経済規模では劣るイギリスの首都ロンドン、
フランスの首都パリと比較して
不動産価格は3割から4割という状態。

ドイツ国内でも
ミュンヘンやフランクフルトなど
他の大都市に比べてもずっと低い。

この状況には
ベルリンが辿ってきた歴史が
大きく作用している。

第2次大戦前から
ドイツの首都であったベルリンは
敗戦と同時にアメリカ、イギリス、
フランス、ソ連に分割統治された。

その後、
ドイツは自由主義圏の西ドイツと
社会主義圏の東ドイツに分かれる。

ベルリンは
地理的に東ドイツの中にあり、
その首都になったが米、英、仏に
統治されていた地域だけが飛び地として
西ドイツに編入されたのだ。

西ドイツは
経済的に成長した一方で
停滞していた東ドイツ。

東ベルリンから
豊かな西ベルリンへ逃れる人に
憂慮した東ドイツは飛び地の西ベルリンを
ぐるりと壁で取り囲んでしまった。

壁の中だけで
どんどん発展してゆく西ベルリンと
困窮してゆく東ベルリン。

1990年ごろに
自由主義と社会主義の雌雄は決し
社会主義国家の多くは地球上から姿を消しているが、
ベルリンのその勝敗を一都市の中で経験したことになる。

しかも東西分断の象徴であった壁の跡地
(数十メートルから100メートルぐらいの幅があった)
はその後20年間ほとんど放置されていた。

東西ドイツの統合で
ベルリンは再び一つになったが
当然その中には近代化された地区と
立ち遅れた地区が一つの都市に内在していたうえに
その真ん中に変な空き地が存在していたのである。

こんな妙な街が
再出発をする国家の首都として
ふさわしかったかどうかはともかく、
統一ドイツはこのベルリンを首都と定めた。

経済格差のある東西の統合には
大きな苦しみが伴ったものの
西側の工業生産力をもってドイツはそれを克服。

今ではユーロという
統一通貨圏の盟主となっている。

ところでこのユーロ圏というのは
ドイツにとっては経済的に非常に有利な枠組みである。

一カ国に一通貨が存在する
通常の国家が輸出を伸ばし経済成長を遂げると
その国の信用が高まり、
為替の上昇を招いて経済成長が鈍化する。

これは
アメリカ、日本、中国など
輸出で経済力をつけてきた国が
すべて経験してきたことである。

逆に相対的に
為替の安い国の製品は割安になり、
産業の振興に努めれば
輸出競争力を増すことができる。

ところがユーロは
通貨は統合されているものの
加盟国は独立国家としてそれぞれの
産業で経済を営んでいる。

ドイツが
いくら輸出競争力をつけても
産業力でははるかに劣る別の加盟国と
平均化されてユーロはそれほど上昇しない。

要するにユーロという通貨は
平均以上の経済力をもった加盟国には有利で
平均以下の国には非常位に厳しい枠組みなのである。

普通に考えれば
加盟国内では格差が広がるばかりだ。

統一国家であれば
ここで所得の移転をして
全体の水準を一定以上に保とうとする。

例えば日本の場合、
所得の高い東京や大阪など
大都市が稼いだお金は
経済力の劣る自治体に
地方交付税として再分配される。

ところが独立国家の
集まりであるユーロの中で
東京などと同じ立ち位置にある
ドイツはそれをする義務もない。

(実際ドイツは義務とは別に
多額の資金を出してはいるが
その際救済する加盟国に厳しい要求を
突きつけていることはギリシャの例を見ても明らか)

良いか悪いかは別にして、
ドイツがこの枠組の中で
ますます力をつけてゆくことは
必定のようである。

そのドイツが
3,000億ユーロ(約34兆円)をかけて
取り組んでいる首都再建により、
2014年頃からベルリンの
不動産市場が活性化している。

加えてイギリスの
EU離脱によるユーロ相場の不安定化、
あるいは中東からの難民流入による
住宅供給の逼迫など、
あらゆる意味で注目に値する
市場であることは間違いないだろう。

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投資家として、そしてFA(ファイナンシャルアドバイザー)として海外で20年間生き抜いてきた玉利将彦が独特の視点から語る海外投資の極意

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