長期国債の利回り(長期金利)がマイナスに突入

2016年が明けてからわずか40日。

世界の株式市場は下落に次ぐ下落。

商品市場では
原油価格が昨年からの
トレンドを受けて続落。

為替市場でも円高が進んでいる。

そして2016年2月9日、
日本の債券市場でも国内では
史上初の珍事が起こった。

「長期金利がマイナス」

我々一般人にしてみれば
お金を貸したり、預金したりすれば
利息はもらえるものというのが常識だろう。

金利がマイナスということは
お金を貸している方がさらに利息を
支払わなければならないということになる。

お金の貸して、
自分が使う自由を
手放しているのにさらに
貸している立場であるこちらが
利息を支払わなければならないなら
誰が好き好んでお金を貸したりするのだろうか?

庶民感覚として
こう思うのは当たり前だ。

だから我々にとって
マイナス金利は不思議なのである。

2016年1月29日に
日銀は国内の銀行が
日銀に持っている当座預金口座の
預金の一部に対して
マイナス金利を導入すると発表した。

実際は2月16日から実行される。

このマイナス金利は
銀行だけに課せられるもので、
我々の一般の預金者には及ばない。

利率は相変わらず
相当低いものの従来通り
我々の預金には金利が付く。

つまり銀行は
自分たちが預けている
預金には利息を支払い、
自分たちが預かっている預金にも
利息を支払うという二重の出費を迫られる。

だから
日銀当座預金に預けている
お金の融資先を別に見つけて
金利を稼がなければならないので、
滞留していたお金が市中に出回り
景気に良い影響を与える。

これが日銀の狙いである。

それと
今回の長期金利が
マイナスになったということは
どう違うのか?

長期金利とは
10年物の日本国債の
金利のことである。

10年という
長い期間運用する
国債の金利なので
長期金利と呼ばれている。

国債は国が発行する債券。

債券を買うと
一定期間(例えば半年や1年)ごとに
決まった金利が支払われる。

また債券には
償還というのがあり、
決められた期間を過ぎると
額面金額の元本を返してもらえる。

例えば額面1,000万円、
利率1%、償還期間10年、
年一度の利払いの債券を買えば
買った年から毎年10万円の
利息(クーポン)を受け取り、
10年後の償還期限を迎えると
元本の1,000万円を返してもらえるのである。

要するに
1,000万円の債券を買って
10年後の償還時期まで持っていれば
100万円の利息を受け取れる
投資商品ということになる。

一方で
債券には取引市場があり、
償還期限を迎えていない債券を
そこで売買することが可能だ。

債券の市場も
株式市場と同じように
売り方と買い方の需給の
バランスによって価格が決まる。

債券を売りたい人に対して、
それを買いたい人が多ければ
債券の価格は高くなるし、逆だと安くなる。

仮に上述の10年間に
合計で1,100万円になる債券が
起債直後に市場で900万円買えるとしたら、
10年間で200万円の儲けになるので
利回りはオリジナルより高くなる。

これが債券価格が下がって、
利回りが上がるということである。

逆に同じ条件の債券を
1,150万円で買ったとしたら、
それを10年持っていたとしても
手にできるのは1,100万円にしかならないので
利回りは完全にマイナスである。

かなり極端な例だが、
これが長期金利がマイナスになる
ということである。

10年後の償還までに
受け取れる合計金額よりも
高い価格で国債を買う。

通常であれば
考えられないそんな状態に
日本の長期国債はなっている、
ということである。

なぜか?

おそらくこういうことではないかと思う。

長期国債を
買っているのは
主に銀行や保険会社などの
機関投資家である。

2月16日から
日銀当座預金にマイナス金利が付くので
銀行は資金を当座預金から引き出して
融資にまわすなどで運用しなければならないが
すぐに融資先を見つけるのも簡単ではない。

それならとりあえず、
ということで先週までは
わずかながらプラスの金利が
付いていた国債を買う動機が銀行に生じた。

ところが
折から行われている
異次元金融緩和で発行済の国債の
30%ぐらいは日銀が持っているのである。

従って
日本中の銀行が残り70%の
国債を争うように買った結果、
国債価格が高騰してついには
利回りがマイナスになるくらいまで
上昇してしまったのだ。

庶民感覚からすれば
逆ザヤになってまで
買う必要はないじゃないか、
と訝しく思えるのだが
巨額のお金を扱う銀行には
彼ら独自の事情がある。

巨額のお金を
日銀当座預金から引き出しても
現金を置いておく場所に困るのだ。

数千、数百億円の
現ナマを置いておく
金庫など持っていないし、
貸し倉庫に置くにも保管料が
かかるうえに盗難のリスクもある。

なら、
金利がつかなくても
もしくはマイナスでも
倉庫代より安いなら
国債を買った方がずっとマシだ。

金利がマイナスに
なるところまで国債の価格が
高騰すると知っていたかは定かではないが、
銀行側にもこうしたやむにやまれぬ
事情があると推測できる。

今の段階では
2月16日のマイナス金利導入を前に
国債に殺到した資金がこのような異様な
事態に生み出しただけかもしれない。

日銀当座もマイナス運用、
長期金利もマイナス運用となれば
安易な行き場を失った資金は
いよいよ貸し出しに回るだろうか?

それとも
株式を初めとした
他の金融市場に流れて
相場を押し上げるだろうか?

答えは未知の将来のみぞ知るというところである。

しかし、
国債の利回りがマイナスということは
政府が新たな借金をしやすいということでもある。

日銀が量的緩和と
ゼロを下回る利下げを実行したら、
巨額の累積債務があり中国よりも
格付けの低い国の国債の価値が高まり、
資金調達が容易になった。

マネーというのは
摩訶不思議なものである。

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投資家として、そしてFA(ファイナンシャルアドバイザー)として海外で20年間生き抜いてきた玉利将彦が独特の視点から語る海外投資の極意

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