ニューメキシコで
州間高速道路40号線に合流する。
今回の旅の大きな目的である、
ルート66を走るのだ。
「ルート66」
かつてイリノイ州シカゴから
カリフォルニア州サンタモニカを
結んでいた国道。
僕にとっての
アメリカのイメージを象徴する道。
ここを覆う空気に触れたかった。
これまでの人生で読んだ中でも
もっとも愛する小説のひとつである
ジョン・スタインベックの
「怒りの葡萄」
の舞台でもある。
史実をもとに20世紀初頭の
モータリゼーションと自然災害によって
自分たちの耕作地をを追われた農民家族が
再起をかけてカリフォルニアを目指す
苦難を描いた物語。
実はオクラホマやカンザスから
農民たちがカリフォルニアを目指した
本物のルート66はすでに廃線となっている。
なので、今回はルート66の
後継のハイウェイを走行する。
テキサスからオクラホマへ。
相変わらず乾いた大平原が続くが
それまで目にすることの多かった
キャニオン風の山は無くなっている。
晴天の中に
時折黒い雲が浮かんでおり、
その下に入るとワイパーを
目一杯動かしても前が見えないような
土砂降りに見舞われる。
5分ほどすると雲の下を抜け
再び夏の太陽の下に晒される。
人間は自然の前には無力であり、
天気ひとつ変わればそれに何とか
対応することしかできない。
アーカンソー、ミシシッピ、アラバマ。
南北戦争では
奴隷制度維持のために戦った
いわゆる南部諸州。
「ディープサウス(Deep South)」
と呼ばれる地域。
表向きはともかく
黒人人種差別が根強く残る様子は
途中何度か通った水の淀んだ川沿いに
あばら家の集まる黒人居住地区から伺える。
綿花畑が両脇に広がる道を抜けると
南部最大の都市ジョージア州アトランタ。
いつもは格安の
田舎のモーテルが定宿だが、
この日ばかりはダウンタウンにある野球場、
ターナーフィールドの傍にホテルを取る。
その日の夜おこなわれる
メジャーリーグベースボールの試合、
「アトランタ・ブレーブスVSシンシナティ・レッズ」
を見るためだ。