さて、
先にブックメーカーアービトラージは
一部の人たちの間で「詐欺」というふうに
捉えられている事実があると書いたが、
これは2010年頃にある会社が
ブックメーカーのオッズのズレを利用して
裁定取引で儲けるという手法に着目して
広く一般から資金を募って
運用をおこなったことが原因だ。
先のアービトラージの例に立ち返ると、
オッズのズレを見つけてタイミング良く
両賭けすることができれば、
USD137.5の投資金に対して
USD150の配当が出るわけである。
利益はUSD12.5、リターンは9%の
確実に儲かる投資ということもできる。
少しビジネスセンスのある人なら
人をたくさん雇って
ブックメーカーアービトラージを
やらせれば大きな利益を生む可能性がある
ということを感じるだろう。
その会社はまさにそれをやった。
ただ自分で投資した資金で
やっているならまったくの自由、
問題のないことだったのだが、
彼らは投資家から資金を集めて
利益の一部を還元する、
ということをおこなっていた。
1回の取引のリターンが数%でも
同じ元本を1ヶ月に何度も回せば
その利益はおびただしい。
例えば月に30%の利益が出れば
賭けを実行する人員の給料などの
運営費に20%かかるとしても、
10%の純利益が手元に残ることになる。
「ブックメーカーを通じた
裁定取引で月5%のリターンを保証する。
さらに元本の引き出しは自由」
というのが
投資家から資金を集める際の
この案件の内容だった。
通常このような行為は
「ファンドの運営」
に当たるので金融商品取引法などの
厳しい規制をクリアしなければならない。
そのため彼らは投資家から
運営会社に貸し付けをする形を採り
その利息として5%/月を
投資家に支払うようにしていた。
5%の「利息」は当初、
毎月きちんと投資家の
口座に送金されていたので
元本の引き出しが自由という
手軽さも相まって人気となり
資金は最終的に200億円以上に膨れ上がった。
そして2012年頃、
突然利息の支払いが止まった。