スイスフラン(CHF)の暴騰から見えるもの(3)

このスイスフランの暴騰では
多くのFXトレーダーも大きな損失を被った。

極めて低金利のスイスフランは
それを借りて他のもっと高金利の
通貨に両替して保有すれば、

「スワップ金利」

という金利の差額が受け取れることになる。

だが低金利の通貨は
得てして為替の上昇圧力がある。

スイスフランは
安定した通貨と見なされているので
皆がそれを欲しがるから為替が高くなりやすい。

だからスイス国立銀行は
利下げをすることによりスイスフランの
魅力を低めてそれを手放すように促していた、
と言える。

それでもスイスフランの人気は
収まらずにその次の手段として、
スイス国立銀行は1ユーロ=1.2スイスフランの
上限を設定する為替政策を採った。

ここまでやって、
ようやくFXトレーダーの中には
スイスフランを売ってスワップ金利を
得ようとするものが現れたのである。

FXトレーダーは
スイスフランを借りて来て
マーケットで売って高金利の通貨を
買うことになるので、
いずれはスイスフランを買い戻して
返さなければならない。

スワップ金利で儲けても
買い戻すときにスイスフランが
値上がりしていればその儲けは減る、
ひどい場合には為替差損の方が大きくなり
損失を被ることもある。

だが中央銀行が

「1ユーロ=1.2スイスフラン以上に上昇させない」

と宣言していればトレーダーは
為替差損を心配することなく、
そのスワップ金利を取りにゆく動機になるのだ。

通常FX取引は証拠金という
自己資金の数倍から数十倍の
レバレッジをかけて取引をする。

日本ではレバレッジの
上限が25倍に設定されているが
例えばその上限ギリギリを使って
取引を行ったとしたら
為替がわずか4%動いただけで
証拠金は底をついてしまう。

多くのFX会社では通常、
証拠金が完全になくなってしまう前に
ポジションを解消して取引を強制終了する

「ロスカット」

という機能が備わっている。

例えば証拠金の80%が失われた時点で
ロスカットが発動される設定になっている場合、

1ユーロ=1.2スイスフランの
為替レートのときにレバレッジ25倍で
スイスフラン売りユーロ買いの取引をしていれば、

3%ちょっと上昇した1ユーロ=1.17スイスフラン
くらいになると損失が出る前に
FX業者が勝手に他の通貨を売って、
損失を証拠金の範囲内に収めてくれる。

ところが今回の
スイスフランの暴騰は
ごく短時間のうちに40%近くも
動いてしまったので多くのFX会社が
設定していたロスカットが機能しなかったという。

100万円の証拠金に
25倍のレバレッジをかけて
取引している人がこの変動の影響を
もろに受けるとどうなるか?

4%で100%証拠金が
消失するということは40%も動くと
証拠金の10倍の額の損失が出ることになる。

自己資金の100万円を失ったうえで
さらに900万円を「追い証」という形で
FX業者に支払わなければならないのである。

スイス国立銀行の突然の決定により、
一瞬にして多くのFXトレーダーが巨大な損失を被り、
中には破産したものまで出たのである。

海外資産運用メールマガジン【国境なき投資戦略】

投資家として、そしてFA(ファイナンシャルアドバイザー)として海外で20年間生き抜いてきた玉利将彦が独特の視点から語る海外投資の極意

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