このスイスフランの暴騰では
多くのFXトレーダーも大きな損失を被った。
極めて低金利のスイスフランは
それを借りて他のもっと高金利の
通貨に両替して保有すれば、
「スワップ金利」
という金利の差額が受け取れることになる。
だが低金利の通貨は
得てして為替の上昇圧力がある。
スイスフランは
安定した通貨と見なされているので
皆がそれを欲しがるから為替が高くなりやすい。
だからスイス国立銀行は
利下げをすることによりスイスフランの
魅力を低めてそれを手放すように促していた、
と言える。
それでもスイスフランの人気は
収まらずにその次の手段として、
スイス国立銀行は1ユーロ=1.2スイスフランの
上限を設定する為替政策を採った。
ここまでやって、
ようやくFXトレーダーの中には
スイスフランを売ってスワップ金利を
得ようとするものが現れたのである。
FXトレーダーは
スイスフランを借りて来て
マーケットで売って高金利の通貨を
買うことになるので、
いずれはスイスフランを買い戻して
返さなければならない。
スワップ金利で儲けても
買い戻すときにスイスフランが
値上がりしていればその儲けは減る、
ひどい場合には為替差損の方が大きくなり
損失を被ることもある。
だが中央銀行が
「1ユーロ=1.2スイスフラン以上に上昇させない」
と宣言していればトレーダーは
為替差損を心配することなく、
そのスワップ金利を取りにゆく動機になるのだ。
通常FX取引は証拠金という
自己資金の数倍から数十倍の
レバレッジをかけて取引をする。
日本ではレバレッジの
上限が25倍に設定されているが
例えばその上限ギリギリを使って
取引を行ったとしたら
為替がわずか4%動いただけで
証拠金は底をついてしまう。
多くのFX会社では通常、
証拠金が完全になくなってしまう前に
ポジションを解消して取引を強制終了する
「ロスカット」
という機能が備わっている。
例えば証拠金の80%が失われた時点で
ロスカットが発動される設定になっている場合、
1ユーロ=1.2スイスフランの
為替レートのときにレバレッジ25倍で
スイスフラン売りユーロ買いの取引をしていれば、
3%ちょっと上昇した1ユーロ=1.17スイスフラン
くらいになると損失が出る前に
FX業者が勝手に他の通貨を売って、
損失を証拠金の範囲内に収めてくれる。
ところが今回の
スイスフランの暴騰は
ごく短時間のうちに40%近くも
動いてしまったので多くのFX会社が
設定していたロスカットが機能しなかったという。
100万円の証拠金に
25倍のレバレッジをかけて
取引している人がこの変動の影響を
もろに受けるとどうなるか?
4%で100%証拠金が
消失するということは40%も動くと
証拠金の10倍の額の損失が出ることになる。
自己資金の100万円を失ったうえで
さらに900万円を「追い証」という形で
FX業者に支払わなければならないのである。
スイス国立銀行の突然の決定により、
一瞬にして多くのFXトレーダーが巨大な損失を被り、
中には破産したものまで出たのである。