1,000万香港ドル
(2014年10月時点のレートで約1億4,000万円)
以上の資金を香港当局の
認可した投資対象に投資すること
により香港の居住権を得るスキームである
「投資移民ビザ(CITS)」
は海外からの投資を
促進するために2003年に
香港政府によって導入されたものだ。
投資移民ビザも
就労ビザ等他のビザと同様、
ビザ取得後に香港IDカードの
発行を申請でき、
そのIDカードを
7年間維持すれば永住権を
申請することができる。
※7年間のうち
6ヶ月間連続して
香港に入境しなかった時期が
ある場合は申請を
却下されることもある。
2003年の
投資移民制度導入当時の
ビザ発給基準は、
1.650万香港ドル以上の投資が必要
2.香港当局で認めた投資商品及び香港の不動産が投資対象
ということであった。
「投資移民ビザ(CITS)」の
制度は2010年10月に改訂されて、
1.1,000万香港ドル以上の投資が必要
2.香港当局で認めた投資商品が投資対象
となっている。
つまり、このときの改訂により、
・投資額が650万ドルから1,000万ドルへ増額
・投資対象から不動産が除外
されたということである。
この背景には
中国本土からの
投資移民ビザ申請者の
増大が深く影響している。
共産党一党独裁の
体制下にある中国では
言論や信教等様々な
自由が束縛されており、
海外への渡航の自由も
著しく制限されている。
一方で、
経済発展その他の
要素により大きな資産を
築いた中国本土人は数多い。
中国の住民が
投資移民を申請するには
中国本土の居住権の他に
第三国の永住権を持っている必要がある。
この辺り、
本土人は金で居住権を
売っているようなアフリカ等々
発展途上国の永住権を買って
条件を揃えることも多いようだ。
いずれにしても、
急激に力をつけてきた
中国人の富豪にとって
650万香港ドルという金額は
そんなに大きなものではない。
いきおい、
自由度が高く
言語の不自由も少ない
香港の投資移民ビザに
おびただしい数の中国本土の
住民が殺到することになる。
そして
彼らの主な投資対象が
香港の不動産だったのだ。
居住地に使えるような
土地が極端に狭いために
本来が世界的にも非常に高い
香港の不動産がこうした本土住民の
投資によって更に高騰した。
やがて
不動産は香港で生まれて、
結婚して家を買おうと考えていた
普通の香港人に手の届かないものになる。
それを危惧した
香港政府が投資移民ビザの
投資額の基準を引き上げ、
さらに投資対象から不動産を
除外するという対策に出たのである。
税率の安い香港は
資産家にとって羨望の土地だ。
そしてそれは
自由の少ない中国本土の
人たちにはさらに魅力的なものだろう。
中国の人口は多く、
現在でも投資移民ビザを
取得する人の8割は
中国本土の住民である。
投資移民ビザ対して
中国本土住民の申請者の動向は
今後も深く影響してゆくだろう。